2022年8月、岩内町で「移住者お話会」を始めました。
始める前には、コロナ禍の中でも30組以上の移住者に話を聞き、移住後にどんなことが必要なのかを考えてきました。
それでも、最初の2か月、参加者は0人でした。
会場を貸してくれていたfitnessCoCo憩エールの佐藤さんと、私だけ。主催する側しかいませんでした。
今振り返れば、もう少し参加してもらえる土壌をつくってから始めてもよかったと思います。
交流会を開けば人が来る。そんなに簡単ではありませんでした。
それでも、続けてきました。
岩内町に移住してきた人の中には、「何もない」「つまらない」と感じる人がいます。
それは、ある意味では仕方がないと思っています。
岩内町は、国道沿いを見ると空き店舗も多く、外から来た人には、さびれた町に見えやすいです。
でも、町の中に入ると、結構お店があります。
面白い人もいます。
私は、岩内町は、最初から分かりやすく楽しい町ではないと思っています。
でも、人とつながったり、お店を知ったり、地域のことが少しずつ分かってくると、見え方が変わってくる町だと思っています。
問題は、そこまでたどり着かないまま、「何もない町」「つまらない町」だと思って暮らしてしまう人がいることです。
だから、移住者が町の中に入っていくきっかけをつくりたいと思いました。

移住者同士だけで終わらせない
移住者お話会は、名前のとおり移住者同士の交流を軸にしてきました。
一方で、参加してきたのは移住者だけではありません。
岩内で生まれ育った人、Uターンで戻ってきた人、移住を検討している人、観光などで町を訪れた人が参加したこともあります。
移住を検討している人を囲んで、町での暮らしについて話したこともあります。
私は、移住者だけで固まることを目的にはしていません。
移住者同士だから話せることもある。
一方で、岩内で長く暮らしてきた人だから知っていることもある。
町外から来た人だから気づくこともある。
そういう人たちが混ざることで、町との接点が増えていく。
それが大事だと思っています。
「知り合いをつくる」だけでは足りない
移住者お話会を始めた理由は一つではありません。
知り合いがいない。
相談先がない。
町の情報が入ってこない。
移住後に孤立してしまう。
どれも大事です。
でも、それだけではありません。
私は、自分が住んでいる町を知ってもらうことも、移住支援だと思っています。
どんなお店があるのか。
どんな人がいるのか。
どこへ行けば面白いのか。
何か困ったときに、誰に聞けばいいのか。
そういうことが分かるようになると、町との距離が縮まります。
逆に、知らなければ、町の中に面白い店や人がいても、その人にとっては存在しないのと同じです。
実際に、「岩内町がつまらなくて仕方ない。みなさんどうやって楽しんでいるんですか」と言って参加した人もいました。
岩内町は、感じてみると楽しい町だと思っています。
ただ、その楽しさが最初から見えやすい町ではありません。
だからこそ、町を知るまでの時間を少しでも短くすることに意味があると思っています。
ブログ、Instagram、移住者向けLINEも、私の中では同じ方向を向いています。
情報を出すこと自体が目的ではありません。
町の中へ入っていくきっかけを増やすためです。
家族がいるから孤立しない、とは限らない
移住者の孤立というと、一人暮らしの人を想像するかもしれません。
でも、家族と一緒に移住してきたからといって、町の中に自分のつながりができるわけではありません。
仕事をしていなければ、職場のつながりもありません。
家族以外に町の中で話す相手がほとんどいない。
外へ出るきっかけもない。
そういう状態になっている人を、私は何人も見てきました。
実際に、そのような状況から移住者お話会に参加した人もいます。
「家族がいるから大丈夫」ではないのだと思います。
自分自身がこの町の中に接点を持てるかどうか。
それは別の問題です。
同じ移住者だから伝えられる町の見方がある
以前、岩内町を「何もなくてつまらない」と感じて参加した人がいました。
その場では、先に岩内へ移住していた人が、自分なりの町の楽しみ方を話してくれました。
その方が、その後、岩内町を楽しいと感じるようになったのかまでは分かりません。
その後は仕事を始め、会には来なくなりました。
でも、そのとき感じたことがあります。
同じ移住者だから伝えられる町の見方がある。
行政が「岩内町にはこんな魅力があります」と説明することとは、少し違います。
実際に移住して暮らしている人が、
「私はこうやって楽しんでいる」
と話す。
それは、町の見方を増やすことになると思っています。
昼だけでは届かない人もいる
休日の昼間だけでは参加できない人もいます。
そこで、夜の会も行うようになりました。
その会場として何度も利用したのが、ごはんどころGoen.さんです。
ごはんどころGoen.さんの店主も、札幌から岩内町へ移住してきた人です。
話しやすい場所でしたし、移住して町で商売をしているお店を応援したいという気持ちもありました。
それに、交流会という形より、食事をしながら話す方が参加しやすい人もいます。
昼の会に来られない人もいる。
飲食をしながらの方が入りやすい人もいる。
入口は一つではなくていいと思っています。
一番うれしかったのは、会の外で人がつながったこと
移住者お話会を続けてきて、一番「やってよかった」と感じることを一つ挙げるなら、30歳前後の人たちが、そこからつながったことです。
ボードゲームなどをきっかけに知り合い、その後は会とは関係なく一緒に遊んだり、出かけたりするようになりました。
そこから、町内で新しい企画が実現したこともあります。
私は、ここが大事だと思っています。
交流会の日に何人集まったか。
何回開催したか。
それだけを数えていても、この活動の意味は分かりません。
そこで知り合った人同士が、会がない日にもつながる。
自分たちで遊ぶ。
何かを始める。
別の人ともつながる。
その方が、ずっと大事です。
特に若い人が、町の中で仲間をつくり、「ここにいても楽しい」と思える環境は重要だと思っています。
若い人が楽しめない町に、若い人が残るでしょうか。
私は、そこはかなり大きな問題だと思っています。
「岩内に移住者なんているの?」から変わってきた
私が岩内町に来た頃、町民から、
「岩内町に移住者なんていないでしょ?」
というような話を聞くことがありました。
でも今では、町民の方が新しく来た人に、iwaloop paletteを紹介してくれることがあります。
私は、これは大きな変化だと思っています。
移住者がいることを、町民が意識するようになった。
そして新しく来た人を見たときに、
「こういう人たちがいるよ」
「こういう場があるよ」
と気にしてくれる人がいる。
移住者にとっても、それは小さなことではないと思います。
自分たちの存在を地域から気にしてもらえている。
それだけでも、疎外感は少し減るのではないでしょうか。
地域の中で、ただの「よそから来た人」で終わらない。
その入口にもなっていると思っています。
町のお店を知らないままでは、町は楽しくなりにくい
移住者が町の中のお店を知らず、食事も買い物も町外へ行ってしまう。
それでは、本人にとっても岩内町での楽しみは増えにくいです。
そして当然、町のお店の売上にとってもよくありません。
私は、移住者に町のお店を知ってもらうことも大事だと思っています。
店を知る。
行ってみる。
店の人と顔見知りになる。
また行く。
そこから別の人を知る。
そうやって、町の中に自分の接点が増えていきます。
移住者が町のお店を利用するようになれば、それは商店街や町内店舗にも返っていきます。
移住者支援と地域活性化は、別々の話ではありません。
ただし、順番は大事です。
町を活性化させるために、移住者を使うのではありません。
まず、移住してきた人が町の中で暮らしやすくなる。
町を知る。
人とつながる。
店を使う。
楽しみを見つける。
その結果として、町にもプラスが返ってくる。
私は、その順番だと思っています。
参加人数を増やすことが目的ではない
岩内町には毎年、かなりの人数が転入してきます。
でも、その全員を交流会に参加させようとは思っていません。
必要としていない人を、無理に呼ぶ必要もありません。
岩内町の外に生活圏をつくる人もいます。
札幌も行けない距離ではありません。
それで満足している人もいるでしょう。
一方で、
「自分が住む町のことを知りたい」
「町の中で人とつながりたい」
「地域の人と関わりたい」
「岩内でどうやって楽しめばいいのか知りたい」
と思っている人もいます。
そういう人が、必要なときにつながれる場所がある。
私は、それでいいと思っています。
移住者を何人集めたかを競うことが目的ではありません。
必要な人に届くことの方が大事です。
そして、支援する側にも限界があります。
iwaloop paletteだけが、移住定住コーディネーターの仕事ではありません。
一人ひとりを探し出して、追いかけて、参加してもらう。
そんなやり方では続きません。
Instagramやブログ、LINEなどで存在を知ってもらい、必要になった人がつながれる。
持続させるためには、そのくらいの距離感も必要だと思っています。
移住者のために場がある
2022年に移住者お話会を始め、その後iwaloop paletteという形になりました。
でも、私はiwaloop paletteという形を残すこと自体には、そこまでこだわっていません。
必要なものが変われば、形も変わっていいと思っています。
移住者のためにiwaloop paletteがあるのであって、iwaloop paletteのために移住者がいるわけではありません。
ここを逆にしてはいけないと思っています。
同じことは、町にも言えると思います。
町を目立たせるために移住者がいるわけではありません。
人を集めてイベントを開けば、それで地域活性化になるほど単純でもありません。
最初に考えるべきなのは、
「移住してきた人に、この町でどう暮らしてほしいのか」
ということだと思います。
町の中に自分の接点を持てる。
人とつながれる。
町のことを知れる。
必要なときに相談できる。
そして、自分なりに岩内町での暮らしを楽しめる。
その結果として、町のお店を利用する人が増えたり、新しい活動が生まれたり、町の魅力を外へ発信する人が増えたりする。
地域活性化は、そういうところから起きるのではないでしょうか。
最近、普通に食事へ行きました

2026年9月、iwaloopのメンバーに誘われて、ごはんどころGoen.さんへ食事に行きました。
これは交流会ではありません。
ただ、声をかけてもらって食事をしただけです。
でも、考えてみると、こういうことが自然に起きるようになったこと自体が、これまで続けてきたことの一つの結果なのかもしれません。
最初の2か月は、参加者0人でした。
そこから少しずつ人が来るようになり、知り合いが増え、会のない日にも人間関係が続くようになりました。
若い人たちが一緒に遊ぶようになり、そこから別の活動も生まれました。
町民が、新しく来た人に交流の場を紹介してくれることもあります。
移住を検討している人を囲んで話したこともあります。
観光で訪れた人が参加したこともあります。
参加人数だけを見ていたら分からない変化が、少しずつ積み重なってきたのだと思います。
人とのつながりだけでは、定着できない
ここまで人とのつながりについて書いてきましたが、これだけで移住・定住がうまくいくとは思っていません。
仕事。
収入。
住宅。
交通。
買い物。
生活を続けるためには、ほかにも必要なものがあります。
実際、私自身が岩内町に残ることを考えても、仕事の選択肢が狭いことや収入の問題は、大きなネックです。
人とのつながりが増えれば、この町を離れがたくなることはあると思います。
でも、人とのつながりだけでは生活できません。
交流会だけやっていれば移住支援になる、という話でもありません。
情報発信も必要です。
相談も必要です。
住宅も必要です。
仕事も必要です。
地域とのつながりも必要です。
私は、それらを別々のものではなく、つながったものとして考えてきました。
iwaloop paletteは、その中の一つです。
それ以上でも、それ以下でもありません。
最初は誰も来なかった小さな会でした。
4年以上続けてみて、今思うことがあります。
交流会の成果は、開催回数でも参加人数でもありません。
そこをきっかけに、町の中へ入っていけた人がいるか。
人や店とつながり、自分なりの岩内での楽しみ方を見つけられた人がいるか。
そして、そこで生まれた関係が、会のない日の日常にも残っているか。
私は、そちらの方を見ていたいと思っています。
移住者のために場があるのであって、場のために移住者がいるわけではありません。
形を守ることよりも、移住してきた人がこの町でどう暮らしていけるかを考えること。
その積み重ねが、結果として町の店や人、新しい活動にも返っていく。
地域活性化とは、案外そういうところから始まるのではないかと思っています。

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