現在岩内町の商店街で開催中の「絵の町・岩内まちなか美術館」のようすを見ていて、ふと思い出したことがありました。
それは、岩内町移住前に「岩内町には2つも美術館がある」と言われて何の感動もしなかったこと。

街の魅力を伝えることの難しさについて考えました。

東京の劣化版に魅力はない

木田金次郎美術館

少し厳しいタイトルをつけてしまいましたが、たぶんあの当時私が感じたことはこのタイトル通りだったのだろうと思います。
私は東京に29年間、札幌にも14年ほど住んでいました。
「美術館が2つある」ということに魅力を感じるはずがありません。なんなら「美術館がそれしかないの?」と感じるくらい。美術館なんて行ったこともなかったのに。(しかも東京を区切ったら美術館のない区もたくさんあるでしょう)

難しいですよね。
北海道には美術館が1つもない町はいくつもあります。
だから確かに2つあったらすごいことなのかもしれません。
でも、札幌や東京から移住する人にとっては、逆に生活レベルが劣化するというイメージでしかない。

だから、それをいうことは、全く町の魅力を伝えることにはならない。
都市部から田舎町への移住を考えている人は、何を求めているのかをよく考えないといけないですよね。
何を好き好んで生活を劣化させなければいけないのでしょう。多くの人たちは劣化版を望むわけがないのです。

東京にはない文化こそが魅力

まちなか美術館

現在、絵の町いわないまちなか美術館という企画が行われています。
第一弾として、2023年7月26日(水)~8月20日(日)まで、岩内町名店街商店街にある「いど寝具店(高台81−2)」隣の貸しスペースで、「岩内高校美術部書道部まちなかギャラリー」を開催中です。

その後、8月4日(金)~8月31日(木)まで、岩内絵画教室こどもの部の作品展示、9月1日(金)~9月25日(月)まで、岩内絵画教室一般の部の作品展示と続きます。

なんでしょうこれは。
聞いたことないですね。
商店街のお店への展示もそうですし、その展示が絵画教室の作品だという。
それをバックアップしているのが、岩内美術振興協会や木田金次郎美術館。
絵画教室を開いているのも木田金次郎美術館。

そう、むしろ気になるのはこういうところなんです。
規模の大小ではなくて、東京で体験できないこと、札幌で体験できないこと、だからこそ気になるし誇れるんです。

誇るべきは、美術館が2つあることではなくて、なぜ美術館が2つあるのか。どういった役割を果たしているのか。
街の商店や個人宅に絵画があふれているのはなぜ。100年続く絵描きの町はなぜ誕生したのか。
そういったことだと思います。
誇るべきことが違う。ただの劣化版の町と思われてはもったいない。誇るべきことのない町と思われてはもったいない。

どんなに田舎町の施設が中途半端によくなったところで、全てが東京の劣化版なら東京に住んだ方がいい。札幌の劣化版なら札幌に住んだ方がいい。何かの観光ついでに、美術館2つあるなら観てみよう!とはなっても、あえて面倒を抱えて移住する必要なんてないんです。

都会で体験できないこと、昔はあったけど今はなっくなってしまったこと、独自の文化、歴史、そういったものは、都会の人の憧れとなり得るけれど、劣化版に魅力はありません。

ただの都会の劣化版を誇るべきことと勘違いして誇ってしまっている。これこそが都会の人から見た田舎の嫌な面なのではなないでしょうか。「外の世界を知らないな」、「視野が狭いな」、「こんな風にはなりたくないな」(自分がこうなるのは嫌なので田舎には住みたくないな・・・)と感じてしまう。

まとめ

街の魅力を伝えることは難しいですね。
町外の人が何を求めているのか、何を魅力に感じるのか、それはやっぱり、できることなら交流を通して感じ取るのが手っ取り早い。
だから私は、この町では転勤者を含めた移住者との交流の機会をもっと作っていくべきだと思っています。
転勤者の多いこの町では転勤者がもっと町の様々な場面に関わる機会があった方がいいと思います。
そういう土壌がないと移住者を受け入れるような町の雰囲気は生まれない気がしています。
どんなに景色が良くても気候的に良くても、考え方が排他的であったら外部から来る人にとって魅力はなくなるし、現代的価値観になじめない孤立した地域になってしまいます。
ちなみに、移住者が魅力を感じる点について、子供たち、高校生たちは移住者に感覚が似ていると感じています。

先日、某街コンのお話しを聞きました。
都会から来た人たちが一番盛り上がったのは、田んぼが綺麗ということだったとか・・・。

きっとそんなものなんですよ。
都会の劣化版は、退化でしかないけれど、小さなことでも都会にないものは希望となるんです。
希望のある町とない町、どちらに住みたいでしょうか?
答えを待つまでもない。