自分の周囲のことだけ見ていても世の中の流れはわかりにくいです。
前職のつながりから、最近のMRの仕事環境の変化を調べてみました。
想像以上に急速な変化が起きていましたが、これは恐らく製薬業界だけのことではないでしょう。
すべての業務で対面することがなくなった
私は外資系の製薬会社にいたことしかないので、入ってくる情報は外資系企業の話題が多いです。
それが前提ですが、想像していた以上に仕事環境が変化していることがわかりました。
以前にも別な記事で書きましたが、外資系の製薬会社は日本全国の営業所を廃止し始めています。
関連記事営業所を閉鎖するということは、当たり前ですが出勤する場所がないということです。
では、どこか別な場所に集まるのか?
コロナ以前はそれもありました。
チームミーティングは喫茶店で。ということも。
でも今は、それもないようです。
チームのミーティングは、オンラインで。
さらにいうと、営業所の会議も支店の会議も、研修も全てオンラインで済ませるという外資系製薬会社が出てきているようです。
MRは毎月研修を受けなればいけないし、会社によっては支店で集まるような研修もかつては頻繁に行われていたんですけどね。
もう同僚と顔を合わせる機会がない(笑)
ちなみにMRは一般的に、月に1日2日くらいは、病院への上司同行があるものですが、それもなくなったとか。
医師や医療スタッフの方々に、iPadを見せて、iPadを通して上司が挨拶するということも普通になったそうです。
一昔前なら「なんて失礼な!」と思われたかもしれませんが、世の中がこのように動き始めたら、もうそれが普通になって、誰も何とも思わないのでしょう。
あ、あと、IT作業が苦手な方ももちろんいて、そういう人たちは営業所で同僚に会った時に、操作方法などを教えてもらっているということがありました。
事務所がなくなって困っているのか?
それもないそうです。
問い合わせ窓口があって、そこに電話すると、サポートを請け負う海外企業に電話がつながり、日本語堪能な担当者がトラブルを全て解決してくれます。
もちろん、スマートフォンもWi-Fi端末も会社から支給されていて、何時間かかろうが会社負担です。
今はそういう時代です。
私は様々なことをオンラインにして効率化することに全て賛成とは思っていませんが、それは恐らく私の考え方が古いのです。
無駄なことをなくして効率よく進めるのが前提で動いている社会で、その効率化ができていなれば、時間がいくらあっても足りません。
営業所がなくなることでトラブルはないのか?
今まであったものがなくなるのだから、何かしらトラブルが起きるのでは?と思いますよね。
もう10年以上前でしょうか、実は、ある大手外資系製薬会社で各地の営業所を閉鎖したことがありました。
当時、その会社のMRは、「地元のことを何もわからない人が電話に出て話にならない」というクレームがきているという話をしていました。例えば東京の本社の問い合わせ窓口の人が、岩内町の医療関係者から、「今すぐ○○薬局に患者説明用資材届けて」と言われるような状況です。東京で生活する人に岩内町の細かいことまでわかるわけがない。
大手企業なのに顧客サービスの面でどうなの?と当時私は思っていました。それがどうでしょう。今は外資系企業が次々に営業所廃止ですよ。
一時的に顧客に少々の不便があったとしても「背に腹は代えられない」といったところなのだと思います。
企業存続のためにぎりぎりのところで手を打っていると考えた方がよいでしょう。
優秀な人材を雇用したくても、日本では年々生産人口または労働力人口が減っていくはず。その中で優秀な人というのはさらに少ないので、どこの企業も確保に必死。本当に優秀は人材は自分を安売りなんてしないもの。優秀な人材を雇用するためには大変な費用が必要なのです。
さらに新薬を開発するのには何億円何十億円必要なのだというほど、途方もない費用が必要。しかも、それだけお金をかけて開発しても、最終試験で想定外の副作用が出て、発売できずに開発費が全て無駄になることさえある。
そして新薬を発売できない新薬メーカーは存続も厳しくなっていく。
ぎりぎり続けられるバランスの取れるところまで、サービスや営業所のコストを削っているのでしょう。
今なら世間一般の許容範囲が広くて、ある程度のことは許されるだろうというタイミングで一気に動き出したといったところでしょうか。
経営は甘いものではないはず。動いた会社とためらった会社で、この先どのような差が出てくるのか興味深いところです。
少々のトラブルよりも、会社を存続させて、より多くの患者さんたちに画期的な薬剤を提供するという使命感を持っている、というと格好良すぎかもしれませんが、その企業の薬剤がなくなったら生きていけない人が何万人も出るという企業があるのも事実です。
まとめ
昨日偶然、前職の後輩にあたる女性が連絡をくれました。
以前の仕事を辞めて現在子育て中の彼女は、フルリモート環境で、満員電車に乗ることなく快適に仕事ができているそうです。
時代は変化しています。
以前に別な記事でも書きましたが、会社が新しいシステムを取り入れようとするときに、反対して文句を言いだす従業員はたくさんいます。
でも、一旦新しいやり方が浸透して、簡単にできると分かったとたんに、文句を言っていた人たちも手の平を返したように、進んでやり始める。
業務システムのタブレット端末導入やオンライン化もそう。自分でも簡単にできるとわかったとたんに、以前のやり方を否定し始めるんですよ。あんなに新しいことを拒んでいたのに。人間そんなものです。
個人的には、製薬会社はむしろ世間一般から遅れている方だと思っていました。
遅らく今の時代も製薬業界だけが進んでいるということはないでしょう。ほかの業界も同じような取り組みをしているはず。変化についていけない組織は消えていくのみ。遅れていたものが一気に進んだ。そんな時代の変わり目になった年と、のちの歴史に刻まれるかもしれませんね。